空き家

夜間、住宅街

空き家となってもう長いだろう猫の住み着く平屋の群れに、警官が出動し、草木の生い茂る空き家の回りを、胸に下げたベストを上下に揺らしながらトランシーバーを口にあてて駆けていた。近隣の住民は部屋着のまま家を抜け出し、街灯の下で見物していた。

そんな光景を自転車でコンビニへ夜食を買いに行く道すがら二度目にした。

それからひと月もしない間に、平屋はあとかたもなく取り壊されてしまっていた。さら地となった跡地は、周りをフェンスで囲われ、売り地の旗が立てられていた。紅葉の進む初冬の、風もなく日差しの澄みわたる午前だった。
またどこにでもある同じような家々が面なって、コンビニが建つのと同じ速度で建っていく光景が想像できた。いやそれどころか、その家々が数十年後、といっても二十年はたたないだろう将来、空き家に警察が駆けつけた今回の騒動とは別種の哀劇に見舞われるだろうことも容易に想像できた。

私たちはその反復の速度を自分たちの手で早めていっているのだ。家はすでに成人して生まれ、すぐに老いていく、そして家主よりも早く死んでいくのだ。

雑記
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